菜緒子さんは私のものだと考えてもいいんですか? (33)

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杉山さんが、その小さな箱のリボンをゆっくりとといて行きます。
夫が顔を横に向け私の眼をじっと見つめます。
多分その時、私はもう眼に涙を浮かべていたと思います。箱を開ける数分が、私にとってはとてつも無く長いものに
感じられました。

包みを開き杉山さんの手が止まりした。
短い沈黙の後、杉山さんが顔を上げて言いました。
『とても嬉しいな。有難う』
そして、弄ぶ様にリモコンを手の中で転がしながら、しばらく考え込んだ後、夫に向き直ると言葉を続けました。
『奥田さん、このプレゼントを貰ったということは、今この時点から、菜緒子さんは私のものだと考えてもいいんですか?』と。
夫は『結構です』と、静かに答えました。
そして私の顔を見て『菜緒子、いいね』と同意を求めて来ました。
何も言うことの出来ない私を、今度は杉山さんが問い詰めました。
『菜緒子さん、どうですか?』と。
私は『ちゃんとお返事して』と、夫に促され『いいです』とやっとの思いで言いました。
声が喉にひっかかり上手く言葉にならなくて、もう一度言い直しました。
すると、杉山さんは微かな笑みを浮かべながら、私を真っ直ぐ見て言いました。
『じゃあ、スイッチを入れてみてもいいですか?』
さっきよりも、もっともっと長い沈黙が続きました。
私は二人の男性の射るような眼差しに晒され、やがて小さく息を漏らしました。
『・・・・・はい』

菜緒子

2 Comments

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T

生唾を飲み込みそうな

臨場感です。
今晩も楽しみです。

奥田敏彦

Re: 生唾を飲み込みそうな

T様

いつも有難うございます。
菜緒子が飾らず素直に綴ったのが良かったのかもしれませんね。
私にはとても真似できません。

  • 2020/02/17 (Mon) 20:13
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奥田敏彦