それはリモコンの着いたバイブです (30)

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杉山さんは俯く私に、さらに言葉を続けました。『メールも・・・』と。
メール・・・それは、私の性癖、性感帯、好きな体位、受け入れられる性的行為・・・そんな女性がけして口にすることの
ないことを、初めて夫以外の男性に告白した、あの恥ずかしいメールのことです。
私は、夫の見ている前で性玩具の様に扱われても構わないこと、どんな性的行為でも受け入れるつもりであることを、
眼の前の杉山さんに伝えたのです。
私はもう頭が真っ白になってしまいました。そして、頭の中で何度も繰り返していました。
今なら間に合う、やっぱり出来ないわ、と一言だけ言って立ち去れば良いのだと。
けれども、私はその場から微動だに出来ませんでした。『・・・いえ』と小さく息を漏らし微かに首を横に振っただけで、
後は黙って俯くだけでした。
けれども、杉山さんはそれ以上は何も言いませんでした。

席に着き、夫に促された私は頭を下げ『菜緒子です。どうぞ宜しくお願い致します』と何とかご挨拶だけしました。
杉山さんは『堅苦しい挨拶は抜きにしましょう』と笑い、後は三人で雑談となりました。
杉山さんは明るく爽やかな印象で、話題も豊富で好感の持てる方でした。
だた眼だけは、奥に何か秘めているような鋭さがあったように思います。

やがて食事が始まりました。
軽いランチコースを頼んだのですが、結局、私は殆ど口にしませんでした。
オードブルが運ばれて来た時、夫がそっと私の膝に手を乗せ何か促しました。私は直ぐにそれが杉山さんへのプレゼント
のことであることを理解しました。
私は席を立ってバッグに入れて来た物を着けて来なければならないのです。
それは、リモコンの付いたバイブです。

菜緒子

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